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菊地夏野のブログ。こけしネコ。


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松浦理英子のすごさについて

だいぶご無沙汰してしまっているのですがなかなかゆっくり書く時間が取れず、きちんと書こうと思うと書けないのでとりあえず近況報告代わりに本の感想を書いておきます。
少し前に松浦理英子『ヒカリ文集』を読んで感動し、それをちゃんと書きたかったのですがそのままで、最近江國香織『落下する夕方』を読んで同じテーマのお話だったのでその比較を書きます。

同じテーマというのは、もちろん小説の解釈は多様なので、このテーマだ!と決めつけるわけにはいかないのですが、なぜか最近「不倫」に興味があってtwitterで小林明子「恋に落ちて」について叫んだりしていました。つまり不倫や結婚、三角関係といったことが両作品のテーマだと思うわけです。
それらのテーマを文学的に考察する上で必要な、愛人だったり売春婦という女性の存在は、古来無数の芸術作品によって描かれてきました。私はその女性表象にずっと興味があります。

で、ヒカリ文集のすごさは、ヒカリがまだ生きていることです。江國の残念さは華子を死なせてしまったことです。
これももちろん小説中の死はさまざまに解釈できますが、ですがやはりこのような設定における愛人/売春婦的女性が死ぬことは、彼女の立ち位置への制裁、処罰に読めてしまうわけです。
しかも松浦はヒカリをヘテロに止まらない存在に書きました。レズビアンも普通に出てきます。松浦ですから当たり前って言えば当たり前なんですが。
小説内に「マノン・レスコー」への言及もありますが、松浦は愛人/売春婦を殺す文学の男性中心的歴史に楔を打ち、新しく再生させました。しかも家父長を罰して。
愛人/売春婦の表象はそれに止まらず、結婚制度から自由に生きようとする女性をも意味し得ます。ヒカリが世界のどこかで活動していることは、私たちに希望をくれます。

一方江國は華子をとても素敵に書いてくれましたし、死に方も優しく弔い方も愛に溢れています。ですが、華子の死によってしか自立できなかった梨果は哀れではないでしょうか。たとえしばらくの間素敵な時間を共有できた記憶があるとしても。ここに江國の限界があります。世間に受け入れられる作家の道を選んだ限界。世間とは男性が支配する文壇でもあります。

『ヒカリ文集』のように女性を自由に解放してくれる小説や表現がもっと増えるといいなと思います。








by anti-phallus | 2023-07-25 11:52 | ブックレビュー