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菊地夏野のブログ。こけしネコ。


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女性議員増やせキャンペーンについて

 標記の件についてずっともやもやしている。言うべきかどうか悩んでいるけど、結局取材を受けて話していたりするので(笑)、ここできちんと書いて整理しておきたい。
 このところ女性議員を増やせキャンペーンを張っているマスメディアが多い。特に朝日新聞は、今回の衆院選は多様性が大きな争点だとしている。はじめに言っておくが、わたしは「クオータ制」や「パリテ」などの女性の割合を半数に近くする、または一方の性に偏らないようにするという制度には賛成である。よくいわれるように、「人口の半分は女性なのだから」政治家の大多数を男性が占めている現状は大きな問題であり、義務的にでも変えることになんら問題はない。

 クオータ制に反対する人は「性別にかかわりなく能力のある人が政治家になればいい」というが、「能力」という言葉ほどあやしいものはない。今の世の中、本当に能力で選ばれているだろうか?自分の会社、組織を見渡せばそうとは言えない事例ばかりではないだろうか。そもそも能力とは何なのかということは本当に難しい問いだ。ひとによって、見方によって、同じ一つのポストでも大きく異なってくる。「能力」という言葉を使いたい場合には、かなり厳密に定義して、その場合に何が求められているか見定めて慎重に使う必要がある。私は周りで「能力」という言葉が使われる時には決して信じない。たいていの場合、単にその人の好みや利害が合う場合に使われる言葉に過ぎないから。それに、能力という言葉は競争とセットで存在するもので、能力には多寡があるからそれによって人を序列化していいという論理を伴っている。差別を覆い隠したり正当化するためにとても便利な言葉だ。そのようなテキトーな能力主義に社会がどっぷり使っているからいつまでも日本の政治は変わらない。

 その上で、かといって、今のメディアのように、ただ女性を増やせばいいとも思わない。わたしが違和感を感じるのは例えば、衆院選の朝日の特集で、「政策決定 女性が増えれば」という名古屋版の記事(2021/10/8)。お定まりの世界経済フォーラムのジェンダーギャップ・ランキングで始まり、女性議員を増やせばジェンダー平等、マイノリティの人権などが尊重されるという内容。東海3県ただ一人の女性市長のインタビューも載る。この三重・鈴鹿市長は「あえて女性であることを意識して仕事してきた」「避難所で女性のプライバシーを守るようにした」などと言い、女性であることを前面に出しながら、最後は下記のようにいう。

「自民党総裁選では女性が2人出て議論が広がりました。衆院選でも「女性だからこう言わないと」ということはない。いろいろな経験や考え方で選挙を戦い、幅広い議論をしてもらえば、日本がちょっと変わる選挙になるのではないでしょうか。」

 ほとんど何も意味していないような発言だが、この、自民党総裁選については本記事の冒頭でも触れられている。野田聖子氏と高市早苗氏の立候補で候補者が男女半々となったことである。もちろん岸田が勝ったわけだがその過程で高市が注目された。高市といえばタカ派として知られる政治家だ。
 女性であればどのような政治家でも良いのだろうか?わたしは最近、政治家のジェンダーバランスを平等にしたいのならば、何のレトリックもなく、単純に数字の平等を目指すべきだと思うようになった。人口比に合わせて半分、さらに女性がマイノリティという意味合いも含めて最低半分。これなら分かる。加えて、障害者や、アイヌ・沖縄の人々など様々なマイノリティの枠も作るべきだ。それはその数合わせ自体が平等のためだからだ。淡々とやるべきである。間接民主制なのだから当然のことである。
 しかしそこに、「多様性の推進」だの「生きやすい社会」(この記事)など余計なレトリックをつけてはいけない。そういうレトリックをつけたいなら、そういう政治的方向性の女性政治家のみを推すべきである。高市など自民党の女性政治家など含めるのは単なる嘘だ。新聞はフェイクニュースを流してはいけない。

 記事には、女性リーダーには多様性を尊重し共感力のある人が多いというコメントも紹介されている。これには、イギリスのサッチャーや韓国のパククネなど独裁型の女性リーダーは無視するのかという反論がすぐ思い付くだろう。女性だからといって一元化し、「共感力」などという女性の伝統的(とされる)役割をもてはやす、これこそが女性差別でなくて何だろう。

 メディアはジェンダーが重要なテーマだと考えるならば、単に政治家や企業管理職に女性を増やせと曖昧なイメージで唱えるのではなく、女性差別とは何なのか、どのような課題があるのか勉強してほしい。自民党のような女性を安く、あるいはただで働かせ、それが日本の伝統だという価値観と政策で出来上がっている政党に女性が増えることがジェンダー平等であるかのような報道はやめて、ジェンダーに関するあらゆる課題、女性労働・非正規差別、医療福祉軽視から始まって、安全保障や環境・気候変動、エネルギー問題もジェンダーが深く関わっている。そこをきちんと考えることなく安易に数を増やすのがすばらしいことだとしているから、右派タカ派まで女であればいいかのような風潮が醸成されている。これはフェミニズムの誤用・悪用だ。女性は政争の道具ではない。女性議員を増やしたいとメディアが思うならば、最も抵抗している自民党をきちんと批判すれば良い。そこを忖度して曖昧にしているからおかしなことになる。

 議員になっていなくても女性はすでに様々なところで政治に関わっている。メディアは女性に命令するのではなく、応援だけすれば良い。応援する時にも、上の方にいるエリート女性の提灯記事ではなく、社会の底辺で悩んでいる女性、注目されないけれども重要な活動をしている女性、そういう女性たちに目を向けるのが本当のジャーナリズムではないだろうか。













by anti-phallus | 2021-10-22 14:21