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菊地夏野のブログ。こけしネコ。


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#MeToo

#MeTooの動きから目を離せない。アメリカ映画界から始まった動きが各界に広がっている。政界に関する報道もあります(朝日の記事)。

 アリッサ・ミラノ始めハリウッドの有名女優がそろって参加しているから、日本の若い人々にもそれなりの大きなインパクトがあるものでしょう。しかもカトリーヌ・ドヌーブやブリジッド・バルドーら往年のフランス・スターまで参戦した。まあドヌーブやBBと言っても今や知る人しか知らないかもしれないけど、わたしはなぜか高校・学生時代少しフランス映画にはまっていた(当時目新しかったBSチャンネルでしょっちゅう放映されてた)ので、なつかしかった。ドヌーブらはMeTooの運動に対して反対したのですが、その後、批判を受けてセクハラ被害者に対して謝罪したようです。ドヌーブとしては、性暴力・性被害は当然良くないが、映画を始め表現に対する魔女狩りのような規制には反対だ、と自分の立場を明確にしました。




 というわけで、この米仏の論争は、セクハラ・性暴力自体については良くないことは当然だという共通理解がある程度できたけど、映画や美術界における性表現や「ジェンダー問題」についてはまだ争点となっているようです。例えば、女性の裸が描かれた絵をイギリスの美術館が撤去したという件などがよく報じられています。



 こちらの映画や美術に関する問題については、日本の反応を見ても撤去に否定的なものが多いようです。ですが、美術作品といえば女性の裸のオンパレードなのは誰でも知っていることで、そこにどのようなジェンダーをめぐるポリティクスが働いているか、考えてみることは大切。美術館だけでなく街ですらたまにおかれている彫像などにも女性の裸は展示されています。これをどう考えるか。一切撤去すべきなのか?だとするとわたしたちの美術・芸術の歴史はその多くがお蔵入りすることでしょう。それとも、この歴史を素材に、新たな、別な視線にもとづいた美術作品を発掘したり、創造したりという方向に向かうのか、議論の行き着く結論はひとつではありません。
 上記のイギリスの例は、国や行政などの一方的な命令によるものでもなさそうですし、美術館側が問題提起として行った一時的な措置のようですから、議論のきっかけとして歓迎すべきではないかと思います。
 映画の方を見ると、ルイス・ブニュエル、大島渚、ナボコフらの映画が性差別的だとして批判されたりしているようですが、こういうことにドヌーブらが反発したのは業界人として当然の行動でしょう。



わたしも一方的に禁じられるのはおかしいと思いますが、彼らは「大監督」として権威化され、持ち上げられてきている表現者たちです。ドヌーブらが名を挙げたフランス映画の代表作は、その多くが男性中心的なストーリー・物語・演出で作られています。私はそれでも面白く見てしまう映画ファンですが、同時に作品に含まれている様々な差別・暴力の問題を見過ごしていいとも思いません。権威を一旦棚に上げて、作品の意味を議論する機会を増やすのは、映画や美術を深め、広げるためにも意味のあることだと思います。

 さらに驚いたのは、小説『侍女の物語』の作者マーガレット・アトウッドもme tooに否定的な姿勢を発表したということ。

 ちょうどディストピア小説として関心を持って『侍女の物語』を読みかけたところだったので驚いた。
 ここまでくると、世代対立という要素が目立ってきますね。ドヌーブやアトウッドさんらの世代は、現在より性役割意識が強固な時代に自己形成した方々だから、映画や文学などの世界で成功するにはその男性中心的ルールの中で頑張らなければならなかったから、逆に女性に厳しくなる方も多い。
 もちろんアトウッドさんが問題にしている大学教員の解雇などについては、事情は様々で、常に処分が正しいわけではありませんが、かといってひとつのケースをMeToo批判に結びつけるのはどうなのか、ちょっと残念なような・・・。誰かが自分に起こった何かにNoということがどれだけ大変なことか、どうして見守ってくれないのでしょうか。対等な関係だったらいえるでしょうが、職場や学校などの上下関係で作られた組織の中で声を上げるのは並大抵ではありません。映画や美術などのフリーで活動する世界であっても、逆に人間関係・人脈が重要になる業界ですから、もっと声を上げにくいとも言えるかもしれません。

 翻って日本では大きな動きにはなっていないといわれていますが、伊藤詩織さんの『Black Box』はたくさん売れているようですし、共感する女性は多いはずです。私も読みましたが、被害の事実が克明に描かれていて、訴えるまでの葛藤に心を打たれました。



 ハリウッドのような目立つ動きにならなくても、ずっと地道にセクハラや性差別に対して声を上げようとしている女性たち、支援する男性たちはいます。対岸の火事として見るのではなく、じわじわと、#MeTooに共感するひとびとの小さな努力が、日本を変えていければと思います。








by anti-phallus | 2018-02-14 14:27