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菊地夏野のブログ。こけしネコ。


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ミツバチの羽音と地球の回転

 先日,ドキュメンタリー映画「ミツバチの羽音と地球の回転」を観た。
 名古屋駅裏のシネマスコーレにて。最終日だったためか9割方の入り。しかし年齢層は高し。
 時間的には長目の作品だけど,長いと感じさせない構成は良質。テーマも明確。無駄がない、分かりやすいドキュメンタリーだった。
 
 だけど、違和感というか、物足りなさも残った。
 映画のメッセージにはほぼ完全に賛成するし、今の日本の状況においてこの映画はできるだけ多くの人々に観てもらいたい。あまりケチを付けたくはない。でも、政治的立場が同じだからといって批判をしてはいけない訳ではないし、そもそもこのブログはひねくれててオッケーの立場(???)だから、あえて書いてしまおう。

 みょう〜にヘテロセクシュアルな空気が全編に漂っているような気がしてしまったのだった・・・。何じゃそれ,と言われそうだけど、つまり、やけに男性の、男性的な活動家の姿がクローズアップされているんですよね。
 何十年間も祝島の反原発運動のリーダーを務めてきたという父親をもつ、30代の男性が主役と言っていいだろう。カメラは基本的にこの「若い」男性(30代が若いかどうか微妙だと思うけど映画の中ではそういうことになっていた)を追う。
 彼が島に戻り、家庭を形成し、運動に関わり,率いる様子を追う。最後のあたりでは妻が二人目の子どもを妊娠したことが映され、また彼女が留守の日に彼がご飯を作ったり、家事をやっている様子が映り、それについて監督は「料理する男の人って貴重よね、あなたは幸せね」(細かい記憶間違っていたらすみません)という意味のことを彼女に言う。(ちなみに彼女の方はほとんど発言がない…)
 そういう「家庭的な」一面を織り交ぜながら、映画のラストは彼の決然とした顔と言葉、「生きるならこの島だなと思った」(これも言い回しは不確実です)で終わる。
 つまり、一般的に、「女性」に好まれる「男性」の姿なんですね。

 そして、わたしが一番もったいないと思ったのは、ナレーションで監督が「女性たちが運動を支えてきた」と言いながら、あまりその女性たちにはスポットが当てられなかったこと。デモや抗議行動の場面で一番多かったのは高齢の女性たち。彼女たちは時に楽しそうに,時に真剣に運動に向かっていた。だけど,彼女たちが現れるのは常に集団としてであって、一人一人の女性たちの顔や言葉が十分引き出されてはいないように思った。どうしてだろうか。マイクを当てても彼女たちは話さないからだろうか、それともマイクを当てること自体が少なかったのだろうか。

 辺野古の座り込みでも多いのは高齢の女性たちの姿。だけど、マイクを握ったり,文章を書くのはいつも男性。

 これは何も鎌仲さんひとりの問題(問題化しているのはわたしに過ぎませんし)ではないだろう。運動自体が男性中心的に形成されていれば運動の表現もそうなってしまうのかもしれない。だけど、運動のヘゲモニーが偏っているままならば、やっぱり運動が掲げる課題の解決も難しいのではないかとわたしは思う。原発政策ほど、明確に男性に決定権が集中しているものも少ない。
 祝島の運動が男性中心的なのかどうかは全く分からない。わたしはそれを問題化しているのではない。ただ、映画からは、その点についての問題意識が伝わってこなかったのは確実だし、それについては残念だと思う。
 反原発の運動や表現に、ジェンダーや性差別の問題意識がなくても仕方ないとみな言うだろう。ないものねだりだと。だけど,少なくとも、わたしは、反原発の運動や表現で、男性中心主義やヘテロセクシズムを再生産しないでほしいと思う。じっさいには女性たち、あるいはジェンダー秩序を逸脱する者たちは常に運動の主役であったのだし、当事者なのだから。そのことに気づかない運動や表現は、原発政策と闘う十分な力を持たないとあえて言い切ってみたい。





 
by anti-phallus | 2011-08-14 20:06 | シネマレビュー