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wamの声明

 急な日韓会談でますます混迷していますが、wamが提言を発表していますので紹介します。

 ※wamとは、長く「慰安婦」被害者を支援してきた日本の代表的団体のひとつ、vawwnet-japanの流れを継ぐグループです。


**********************************
みなさま

日本の敗戦から70年の年末に、米国の圧力のもとでなされた日韓外相による
突然の政治的妥結。日本軍の「慰安婦」として繰り返し性暴力被害を受けた女性たち
が、自分たち抜きでなされたこんな妥結は受け入れられないと考えるのは当然だ
と思います。そして、「平和の碑」の撤去を条件にするような日本政府の態度に、
私たち誰もが怒り心頭です。
その一方で、「勝利!」と言うメッセージを送ってきた人や、あまり関心がなかった
周囲のひとたちに、どのように説明すればわかってもらえるのか、困惑している方も
いらっしゃるかもしれません。

今後、どのように運動を展開し、被害者が納得できる解決案につなげていくの
かは、これから模索していくことになりますが、日本政府がこれからでもできる、
為すべき行動として、とりいそぎ、wamで案をまとめてみることにしました。
これから先、日本政府の態度や、被害を受けた女性たちの決断などから、
提言も運動方針も変わるかもしれません。しかし、この日韓政府の妥結を聞いて
動き出した台湾政府、そしてマレーシアの与党幹部が、自分の国にも被害者は存在する
と話したとのニュースを見ると、ここからアジア各地の被害者の被害回復に
どうやってつないでいくのかも、真剣に考えなければならないと思っています。

これは、wamだけで考えた素案であって、判断が甘いのではないかというお叱り
を受けるかもしれませんが、議論のきっかけと考えていただき、wamとしても訂正
し、書き換えていく可能性も含めて提案するものです。どうぞお読みいただけ
れば幸いです。
http://wam-peace.org/20151231/

今年は本当に、最後の最後まで大変な年でした。
来年こそ、希望を現実にしていく着実な一歩を感じられる年にしていきたいです。

みなさま、よいお年をお迎えください。

2015年12月31日
アクティブ・ミュージアム「女たちの戦争と平和資料館」(wam)運営委員一同

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
日韓外相の政治的妥結に対するwamからの提言
声明
政治的「妥結」を、真の「解決」につなげよ

 2015年12月28日、ソウルで行なわれた日韓外相会談において「慰安婦」問題を
最終的に解決する合意に至ったと発表された。日韓両政府が合意した内容は、武
力紛争下で甚大な性暴力被害を受けた女性たちに対する被害回復措置としては、
国際的な基準から見ても甚だ不十分である。日本政府は、被害者不在のまま政治
的妥結をつきつけ、苦渋の選択を被害者にせまること自体が暴力的であることを、
「女性のためのアジア平和国民基金」の経緯を通じて学んでいないといわざるを
得ない。
 
アクティブ・ミュージアム「女たちの戦争と平和資料館」(wam)は、日本軍「慰
安婦」制度の歴史的事実を二度と同じ過ちを繰り返さないために次世代に伝え、
女性に対する暴力のない平和な社会をつくるために活動してきたミュージアムで
ある。一人でも多く存命のうちに、すべての被害者が受け入れられるような被害
回復措置の在り方を、アジア太平洋各地の被害者および被害国の支援団体ととも
に議論し、具体的な提言としてまとめる作業にも関わってきた。高齢になった被
害女性たちが早く安堵したいと思いながら、やむにやまれぬ気持ちで声をあげ続
ける姿を見てきた者にとって、被害者が受け入れられる形で「解決」されること
は、切実な願いだった。だからこそ、被害者不在のままに政治的に「妥結」した
日韓両政府に対して怒りを禁じ得ない。

 一方で、安全保障政策を最重要視する米国の圧力のもと、被害者の声を一言も
聞いていないにもかかわらず、日韓両政府が「最終的かつ不可逆的に合意」する
という愚かな約束をしたことで、韓国政府が日本政府に外交的な交渉をすること
は、極めて難しい状況になった。被害を受けた女性たちが感じている大きな怒り
と失望を、どうにか希望につなげたい。私たちは、日韓政府の政治的「妥結」を、
被害者が受け入れ可能な「解決」につなげる道を、時間がかかっても丁寧に探っ
ていきたいと思う。

 以下は、今般の日韓両国の合意に基づき、日本政府が為すべき、そして現実的
にこれから為し得る措置の提言である。なおこの提言は、被害者の意思を確認し
たものではないため、被害を受けた女性たちの要求はもっと厳しい可能性も、ま
た妥結そのものを拒否する決断もあり得ることを付記しておく。

1、責任の認知
 今回の合意において、日本軍の「慰安婦」にされた女性たちに対して、日本政
府は「責任を痛感している」と、国家の責任を明確に認めたことは率直に評価す
る。遅きに失したとはいえ、これまで使っていた「道義的」「人道的」などとい
う不用意な言葉を使わず、全面的に国の責任を認めたことは、今後の施策を進め
るうえで重要な前提となる。一方で、公共放送をはじめとした報道各社が、今回
の「責任」は「道義的責任を意味する」といった誤った解釈を報道しており、こ
れでは政府の努力はまったく意味をなさない。

提言1:日本政府は、責任に「道義的」といった限定をつける報道に反駁し、そ
れ以上でもそれ以下でもない「責任」を痛感していることを繰り返し表明しなけ
ればならない。

2、謝罪
安倍総理大臣が内閣総理大臣としてお詫びと反省の意を示したことは評価できる。
しかし、安倍総理大臣のお詫びを岸田外相が「代弁」する形で発表され、安倍総
理大臣が朴槿恵大統領に電話でお詫びを伝達するという形式は、被害者が求めて
いた公式謝罪としてはとうてい認められない。国家の人権侵害に対する謝罪のあ
り方として、欧米、例えば米国の日系人強制収容所の被害者への謝罪の形式等と
比較しても、はなはだ不十分である。

提言2:内閣総理大臣のお詫びと反省は、安倍総理大臣から、口頭または文書等
の形式で、被害者に直接伝達されなくてはならない。

3、事実の認知
今回の合意の最大の問題点は、「当時の軍の関与の下」という「河野談話」と同
じ曖昧な表現にとどまったことである。日本軍「慰安婦」制度に関する事実を、
曖昧さのない形で明確に認めることは、被害女性たちが求めてきた被害回復のた
めに不可欠である。すでに公文書等によって十分に明らかにされているように、
日本軍が設置した慰安所は、当時の軍が立案し、組織的に管理、運営した軍の後
方施設だった。また、女性たちの意に反して連行し、強制的な状況のもとで性行
為を強要した日本軍「慰安婦」制度は、女性たちの名誉と尊厳を傷つけただけで
なく、女性の人権を侵害する甚大な犯罪的行為だった。

提言3:どのような行為に責任を痛感し、「お詫びと反省」をしているのかを明
らかにするため、女性たちを意に反して連行した事実を認めた「河野談話」を踏
襲する意志を明確に示すとともに、慰安所設置の主体が日本軍であった事実、お
よびこれらの行為が人権侵害であったことを認めなければならない。

4、韓国が設置する財団への拠出
 韓国政府が設置する財団に日本政府が国庫から拠出するという構想は評価が分
かれている。私たちは、韓国政府が設置することで、財団という形式をとりなが
らも「女性のためのアジア平和国民基金」とは一線を画したこと、また日本政府
が「責任を痛感」したうえで、日本の国庫から拠出されるお金は、日本政府から
の「謝罪の証」であると認められる可能性があると考えている。

提言4:韓国が設置する財団の事業を被害者が受け入れられるようにするために
は、これらのお金が「謝罪(またはお詫び)の証」であることを、拠出の際に日
本政府は明確に示さなければならない。また、「名誉と尊厳の回復、こころの傷
の癒やし」を目的とする財団の運営は、被害者と支援団体の意見を十分に聞いた
うえで実施しなければならない。被害者の傷を癒やす目的で実施する事業である
ことに鑑み、財団の実施する事業について、日本政府は被害者の意思に反する要
求をしてはならない。10億円の税金を活かし、「解決」につなげることは、納税
者に対する日本政府の義務である。

5、平和の碑、記憶の継承について
 今回の政治的妥結で、最も被害者の心を逆なでしたのは、在韓国日本大使館前
の「平和の碑」を撤去するよう求めた日本政府の態度である。被害者の心の傷を
癒やしたいという日本政府の発言が真意であれば、本来、花を手向ける行為こそ
が求められている。「慰安婦」被害者を含む市民によって設置された「平和の碑」
の撤去は、そもそも交渉内容に入れてはならず、「被害者の納得する措置」を求
めてきた韓国政府は、撤去に向けた努力さえすべきではない。

提言5:在韓国日本大使館前の「平和の碑」や、米国等で設置される記念碑は、
武力紛争下の性暴力根絶や、被害者の名誉と尊厳の回復を求めるグローバルな市
民の行動の表れであることを、日韓両政府は認識しなければならない。そして、
日本の負の歴史を次世代に引き継ぐ意思を示すために、日本政府はこれらの碑に
反対する行為は控えなければならない。

6、真相究明と教育、否定への反駁
 真相究明や、教育を通じた歴史の継承について、今回の合意事項ではまったく
触れられなかった。しかし、自分たちと同じような被害が二度と誰にも起きない
ように、歴史の事実を教訓として伝えていくことは、被害者の名誉と尊厳の回復
のために最も重要かつ不可欠な要素である。

提言6:日本政府は、政府保有資料の全面公開、国内外でのさらなる資料調査、
国内外の被害者および関係者へのヒヤリングを含む真相究明、および義務教育課
程の教科書への記述を含む学校及び一般での教育を奨励していかなくてはならな
い。また、歴史の事実や日本の責任を否定する公人の発言には、断固として反駁
しなくてはならない。

7、国連等の国際社会に対する働きかけについて
 「国連など国際社会でたがいに非難、批判することを控える」と両国が表明し
たことは、日韓両国が日本軍「慰安婦」問題を、グローバルな女性の人権課題だ
と認識していないことの表れである。韓国の被害者を含め、日本軍によって重大
な人権侵害を受けた「慰安婦」被害者が被害回復を求めるのは当然の権利であり、
日本政府が真摯な対応をしない限り、国際社会からの要求は継続することを認識
すべきである。とりわけ、国連ユネスコ記憶遺産への日本軍「慰安婦」に関する
記録の登録は、武力紛争下で軍隊から性暴力を受け、生き抜いた女性たちの生の
記録として保護に値するものであり、重要な世界的遺産として、本来であれば日
本政府が自ら推進すべき事業である。

提言7:日本政府は、国連人権機関の勧告を真摯に受け止め、女性の人権の確立、
日本軍「慰安婦」制度の歴史の記憶化に向けた国際社会の取り組みを妨害しては
ならない。
 今回の政治的「妥結」を、最終的な「解決」につなげられるかどうかは、日本
政府のこれからの行動にかかっている。日本軍の「慰安婦」にされたために、戦
後の70年をも過酷な人生を強いられた被害者たちが、最後のひとときを安堵し、
心安らかに過ごせるよう、私たちはどのような努力も惜しまない。そして、この
日韓政府の合意事項の行方を、固唾をのんで見守っているであろうアジア太平洋
各地の被害者に対しても、同様の被害回復措置をとることを求める。

2015年12月31日

アクティブ・ミュージアム「女たちの戦争と平和資料館」(wam)
〒169-0051 東京都新宿区西早稲田2-3-18 AVACOビル2F
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# by anti-phallus | 2016-01-08 16:15 | 日本軍「慰安婦」問題 | Comments(0)

フェミニズムと美

 またよもやまですが。フェミニズムと美の関係は複雑で、フェミニズムに関心のある人からもそうでないひとからも「女性の美に対するフェミニズムの考え」をなにか固定的な内容として受け止めているように感じることがある。
 まあ代表的には、「フェミニズムは女性に美しさを求める社会を批判するものだから、フェミニストは外見など気にしてはいけない」というイメージ。こういうイメージが強くなると、フェミニストはスカートを否定するとか、美人が嫌いとかいう歪んだフェミニスト像が生まれることになる。また、フェミニズムを支持する立場の人自身がそういうイメージに縛られているように感じることもある。

 わたしにとってのフェミニズムはそういうものではないので、不思議だなといつも感じている。それで思ったのは、わたしの場合フェミニズムに入っていったのは、90年代の華やかだった頃のフェミニズム関連の文献からで、美をテーマにしたものと言えば例えば江原由美子さん編集の「フェミニズムの主張」シリーズ(勁草書房)とかからで、そんななかではミスコンや性の商品化なんかが賛否両方から喧々諤々と論じられていて、でも統一的な結論などは提示されていなかった。だから、そういう風に色んな立場から自由に議論する場がフェミニズムみたいなイメージを持っていたと思う。
 それは単に何でも議論すればいい場、という意味ではなくて、ジェンダーや性に関してはまず言葉にするのがはばかられる社会というものがあって、とくに女性が率直に性について語るのは今でも「恥」や何かのネガティブな評価を受けやすい。美や外見に対する強制力はとても強いものがあって、それを否定するのには勇気が要る。そんななかで、自分個人の感覚も含めて議論しても許される場、というのはたぶんフェミニズム以外にはないのではないだろうか。90年代よりも今はさらにそうだという気がする。

誰もが自分をありのままに認められたいと思っている一方で、そのためには「ああいう顔」「〇〇さんみたいな体」にならないとだめだという圧力も自分の中にある。フェミニズムに関心のある人だってこういう社会的圧力から完全に自由ではない。単に、この美に縛られた社会を否定するのではなく、そういう情けない自分も受け入れながら、本当に自分にとって望ましい美を考え探し続けていく。それをサポートするのがフェミニズムなんじゃないかなと思う今日この頃です。
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# by anti-phallus | 2015-12-23 15:27 | フェミニズム | Comments(0)

『帝国の慰安婦』起訴関連声明続報(後半)

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# by anti-phallus | 2015-12-11 18:21 | 日本軍「慰安婦」問題 | Comments(0)

『帝国の慰安婦』起訴関連声明続報(前半)

前回アップした声明に関して続報です。
ソウルで記者会見をしたということで、そのさいのプレスリリースを送ってもらいました。
賛同の言葉などが載っていますのでご覧ください。

しかしPDFから画像変換しましたが読みにくいですね・・・すみません。

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# by anti-phallus | 2015-12-11 18:04 | 日本軍「慰安婦」問題 | Comments(0)

『帝国の慰安婦』問題:やっと共感できる声明が・・

 朴裕河さんの著作の問題についてどうやって書こうかと悩んでいましたが、納得できる声明を出してくださる方々がいました。
 韓国の研究者を中心としたものですが日本にも呼びかけています。
 この間の動きで混乱している方、ご覧ください。

 「反省」の言葉で締めくくられていますが、このような事態にまでいたるような状況を作ってしまったのは日本社会の側、日本の「知識人」の責任が大きいですよね・・。本当に残念です。

※先行して異なる立場から、日本の研究者らが起訴に反対する声明を出しています。わたしはこちらの声明はたいへん判断が難しいものだと思います。ただいえることは、『帝国の慰安婦』がもっている危険性について十分に認識できていないのではないかということです。起訴という国家権力の行使についてはわたしも慎重になるべきだとは思いますが、該当書籍が被害女性たちの心を深く傷つけた−−−−−そのような陳腐な表現しか出てこないのが心苦しい−−−−−だろうことは想像に難くないし、この書籍が「慰安婦」問題の進展を促すようには思えないのです。

※注意 下記リンクは標題のものとは全く別の声明です。参考まで紹介※
ハフィントンポスト記事 「帝国の慰安婦」朴裕河教授の在宅起訴に学者ら54人抗議声明(全文)」

 声明が錯綜していて混乱・・・。紛らわしくてすみません。わたしが本当に紹介したいのは下記に引用するほうです。

 私たちがすべきことは何よりも「慰安婦」問題を解決するために被害女性たちが願う方法、国家謝罪と補償を実現し、この問題を二度と繰り返さないように実効的な制度を政治・教育・メディア多様な領域から実施していくことであって、「慰安婦も自発的に協力した」とか「日本政府には倫理的な責任しかない」と主張する言論を再生産することではないと思います。


++++++++++++++++++++++++++++++++
『帝国の慰安婦』事態に対する立場

 日本軍「慰安婦」問題について深く考えこの問題の正当な解決のために努力してきた私たちは、朴裕河教授の『帝国の慰安婦』に関連する一連の事態に対して実に遺憾に思っています。

 2013年に出版された『帝国の慰安婦』に関連して、2014年6月に日本軍「慰安婦」被害者9 名が朴裕河教授を名誉毀損の疑いで韓国検察に告訴し、去る11月18日に朴裕河教授が在宅起訴されました。これに対し、韓国の一部の学界や言論界から学問と表現の自由に対する抑圧であるという憂慮の声が出ており、日本では11月26日に日本とアメリカの知識人54名が抗議声明を発表しました。

 私たちは原則的には研究者の著作に対して法廷で刑事責任を問うという方式で断罪することは適切でないと考えます。しかし、私たちは学問の自由と表現の自由という観点からのみ『帝国の慰安婦』に関する一連の事態にアプローチする態度については深く憂慮せざるをえません。日本軍「慰安婦」問題が日本の国家機関の関与のもと本人の意思に反して連行された女性たちに「性奴隷」になることを強いた、極めて反人道的かつ醜悪な犯罪行為に関するものであるという事実、その犯罪行為によって実に深刻な人権侵害を受けた被害者たちが今この瞬間にも終わることのない苦痛に耐えながら生きているという事実こそが、何よりも深刻に認識されなければなりません。

 その犯罪行為について日本は今、国家的次元で謝罪と賠償をし歴史教育をしなければならないということが国際社会の法的常識です。しかし、日本政府は1965年にはその存在自体を認めなかったため議論さえ行われなかった問題について1965年に解決されたと強弁する不条理に固執しています。日本軍「慰安婦」被害者たちはその不条理に対し毎週水曜日にすでに1200回以上も「水曜デモ」を開催しており、高齢の身をおして全世界を回りながら「正義の解決」を切実に訴えています。私たちは、これらの重い事実を度外視した研究は決して学問的でありえないと考えます。

 私たちは、『帝国の慰安婦』が事実関係、論点の理解、論拠の提示、叙述の均衡、論理の一貫性などさまざまな面において多くの問題を孕んだ本であると思います。既存の研究成果や国際社会の法的常識によって確認されたように、日本軍「慰安婦」問題の核心は日本という国家の責任です。それにもかかわらず『帝国の慰安婦』は、責任の主体は「業者」であるという前提に基づいています。法的な争点に対する理解の水準はきわめて低いのに比べて、主張の水位はあまりにも高いものです。充分な論拠の提示をせずに、日本軍「慰安婦」被害者たちが「自発的に行った売春婦」であり、「日本帝国に対する『愛国』」のために「軍人と『同志』的な関係」にあったと規定することは、「被害の救済」を切実に訴えている被害者たちに更なる深刻な苦痛を与えるものであるといわざるをえません。このように、私たちは『帝国の慰安婦』が充分な学問的裏付けのない叙述によって被害者たちに苦痛を与える本であると判断します。ゆえに、私たちは日本の知識社会が「多様性」を全面に押し出して『帝国の慰安婦』を積極的に評価しているという事実に接して、果たしてその評価が厳密な学問的検討を経たものなのかについて実に多くの疑問を持たざるをえません。

 私たちは、この事態を何よりも学問的な議論の中で解決しなければならないと考えます。韓国と日本と世界の研究者たちが問題について議論し、その議論の中で問題の実態を確認し解決方法を見つけるために、ともに知恵を出し合うことが必要であると思います。そこで、私たちは研究者たちが主体になる長期的かつ持続的な議論の場を作ることを提案します。また、その一環として、まず朴裕河教授や『帝国の慰安婦』を支持する研究者たちに、可能な限り近いうちに公開討論を開催することを提案します。

 最後に、私たちは名誉棄損に対する損害賠償請求と告訴という法的な手段に訴えねばならなかった日本軍「慰安婦」被害者らの痛みを深く反芻し、日本軍「慰安婦」被害者たちにさらなる苦痛を与えるこのような事態に陥るまで私たちの思考と努力が果たして十分であったのかどうか深く反省します。また、外交的・政治的・社会的な現実によってではなく、正義の女神の秤が正に水平になるような方法で日本軍「慰安婦」問題が解決されるよう、更なる努力を重ねていくことを誓います。

2015.12.2.

日本軍「慰安婦」被害者たちの痛みに深く共感し
「慰安婦」問題の正当な解決のために活動する研究者・活動家一同

(1次署名者71名)
ユン・ジョンオク(元梨花女子大学)、チョン・ジンソン(ソウル大学)、ヤン・ヒョナ(ソウル大学)、キム・チャンロク(慶北大学校)、イ・ジェスン(建国大学校)、ジョ・シヨン(建国大学校)、イ・ナヨン(中央大学校)、イ・シンチョル(成均館大学校東アジア歴史研究所)、カン・ソクチュ(ソウル大学校)、カン・ソンヒョン(聖公会大学校)、カン・ジョンスク(成均館大学校)、コン・ジュンファン(ソウル大学校)、クァク・キビョン(ソウル大学校)、クォン・ウネ(東国大学校)、キム・キョソン(中央大学校)、キム・ギオク(漢城大学校)、キン・ミョンヒ(聖公会大学校)、キム・ミラン(聖公会大学校)、キム・ミンファン(聖公会大学校)、金富子(東京外国語大学)、キム・ウンギョン(放送通信大学校)、キム・ユンジョン(歴史学研究所)、キム・ジナ(ソウル大学校)、キム・ヘジョン(全北大学校)、ド・ジンスン(昌原大学校)、パク・ノジャ(Vladimir Tikhonov, Oslo University)、パク・ジョンエ(東国大学校)、パク・ジンギョン(仁川大学校)、パク・ヘスン((社)韓国軍事問題)、ペ・ギョンシク(歴史問題研究所)、ペ・ウンギョン(ソウル大学校)、ペク・シジン(中央大学校)、ペク・ジェエ(ソウル大学校)、ペク・ジョヨン(中央大学校)、ソン・チャンソプ(放送通信大学校)、シン・グリナ(ソウル大学校)、シン・ヘス(梨花女子大学校)、シン・ヘスク(ソウル大学校)、オ・ドンソク(亞洲大学校)、オ・スンウン(漢陽大学校)、ユン・ギョンウォン(東アジア社会文化フォーラム)、ユン・テウォン(ソウル大学校奎章閣韓国学研究院)、ユン・ミョンスク(忠南大学校)、イ・キョンス(中央大学校)、イ・キョンジュ(仁荷大学校)、イ・ミナ(中央大学校)、イ・ドンキ(江陵原州大学校)、イ・ミョンウォン(慶熙大学校)、イ・ヨンスク(一橋大学)、イ・ジョンウォン(聖公会大学校)、イ・ジウォン(大林大学校)、イトー・ターリ(パフォーマンス・アーティスト)、板垣竜太(同志社大学)、イ・ハヨン(中央大学校)、イム・ギョンファ(延世大学校)、イム・ジョンミョン(全南大学校)、イム・ジヒョン(西江大学校)、ジョン・ガプセン(ソウル大学校アジア研究所)、ジョン・ミョンヒョク(東国大学校)、ジョン・ミレ(性売買問題解決のための全国連帯)、ジョン・イリョン(西江大学校)、ジョン・スルギ(中央大学校)、ジョン・ヒョンジュ(梨花女子大学校)、ジョン・ヒョンヒ(ソウル大学校)、チ・ナオミ(北海道大学)、チェ・ジョンギル(高麗大学校グローバル日本研究院)、ハン・ボンソク(歴史問題研究所)、ハン・スンミ(延世大学校)、ハン・ヘイン(韓国女性人権振興院)、ホン・スンクォン(東亜大学校)、古橋綾(中央大学校)
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# by anti-phallus | 2015-12-03 10:16 | 日本軍「慰安婦」問題 | Comments(0)