菊地夏野のブログ。こけしネコ。


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 辺野古 圧殺の海 第2章

 タイトルにある『圧殺の海』は藤本幸久・影山あさ子共同監督の辺野古のドキュメンタリー映画です。終わる前になんとか観に行けたので。ひとこと。
 藤本さんは素材をシンプルに、現場を「そのままに」映しだそうとする方なので、敷居を高く感じる向きもあるようだけど、これは時間を作り出して観に行って良かったと思えました。素材そのまま、と見せながらちゃんと編集も練られていて、辺野古をめぐるこの数年間の展開が頭に入る構成になっています。

 そしておそらくはごくわずかな場面に過ぎない運動の記録から、参加する人々の思いが伝わってくるようです。
 私も含め、沖縄に関しては多くのひとが「後ろめたい」思いをしていると思います。何もできない、していないと。軍事基地のために美しい海をこわすなんて、両手を上げて賛成する人は少ない。圧倒的な不正義。だが「国益」という美名をかぶせると正当化されてしまう。この明らかな欺瞞に後ろめたさを感じるのは当然。ですがマスメディアが全く報道せず、現場との距離が広がると、後ろめたさはいつしか開き直りに変わって、「仕方ない」という現状追認に変わってしまう。これが構造的暴力を承認させられていく仕組みでしょう。

 この悪循環を断ち切れればいいのですが・・・。自分を問われる思いがします。同時に、映画のなかでもあったし、以前辺野古に行った時にも聞いたのですが、「ここに来れないひとたちにはそこでやれることをやってほしい。辺野古にいる自分たちにはできないことがある」という言葉。虚を衝かれる気がしました。
 「現場主義」って強力に私たちを縛っているから、運動の「現場」なる空間に長くいる人がえらい、という序列も発生しやすい。そういうものを乗り越えた言葉だと思います。

 映画から見える運動の中でのユーモアや連帯、そういう運動の文化に触れられることも貴重。ここに収められていないたいへんなことがたくさんあるのだろうけど、そういう「語られていないこと」に思いをめぐらされることも含めて多くの人に観て欲しい。
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by anti-phallus | 2016-08-10 15:31 | シネマレビュー | Comments(0)

選挙結果

 二つの選挙を経て、しみじみと時代を感じている。負けたのは、日本の政治的良心なのだろうか。

 しかし同時に、この結果が意外ではなく、当然だと感じる自分の心もある。日本は今うまくいっていない。日本社会の悪い面が前面に出ている。
 普段相手にしている若い人々から、今の社会の意識が伝わってくる。とくに男性は、「国家」の魅力に惹きつけられている。全員が総動員されて、一つの目的に向かって、敵に向かって戦う世界に憧れている者が多い。その思想内容がいかに単純で軽いものであっても。女性も、一つの枠に入れるように必死になり、遠くを見る余裕が失われている。
 若い人々のこういう意識は、社会の閉塞と自分自身の生き難さと不安を根拠にしているが、運動のイニシアティブを持っている60歳代くらいの活動家層はあまりわかっていないのではないだろうか。世の中がこれだけ不安定化していれば運動など関わる力は出てこないし、支配的な価値観に対抗できない。私の世代ですら、というかこそ、仕事や子育て、介護でいっぱいいっぱいで、政治や社会を考える余裕など残されていない。

 世の中は短い時間にあっという間に変わるんだなあと不思議である。私の学生時代にはまだまだ社会は余裕があった。不景気ではあったが運動はまだ元気で、日本を変える可能性もまだ現実的に感じられていた。それがどんどんきつくなっていった。労働環境は悪化し、社会的連帯のようなものは失われていった。
 とはいえ、日本社会の全員が改憲して「戦争のできる国」にしたがっているとか、拝金主義に染まっているわけではない。多くの人は平和を心から望んでいるし、憲法も変える必要を強く感じてはいない。だがそのような声が政治勢力として結実する仕組みが失われている。

 戦後の左翼運動が政治的に、また思想的にうまく継承されなかった損失は大きい。最近注目される左派的な運動が見事に「左翼」的なものを否定して差異化しているのは悲しい光景だ。
 それからマスコミが政治的圧力によって空洞化されてしまったこと。朝日新聞の「慰安婦」報道バッシングが総仕上げだったろう。今では学生に「新聞を読みましょう」と言いたくても言えない。インターネット上でましな情報を探す方が有益だからである。

 フェミニズムへの市民の共感が、都知事選の小池氏当選に利用されてしまったとすれば、フレイザーの悪夢の日本版である。鳥越氏は戦後左翼を象徴するような存在でもあったから、構図としては分かりやすい。
 日本はどんどん戦前のファシズムに似た状況になってきているが、そのまま昔を繰り返すことはないだろう。新自由主義という新しい意匠を伴っている。
 どちらにしても、しばらく平等や自由を愛する者にとっては苦しい状況が続く。暗闇の中、できることをやるしかないだろう。
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by anti-phallus | 2016-08-01 16:13 | つれづれ | Comments(0)