菊地夏野のブログ。こけしネコ。


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沖縄のハルモニ

 関係者である特権で、『沖縄のハルモニ』を公開前に観ることができた。製作当時は色々と批判があったと聞いていたからどうなのかなと思って観たが、映画に厳しいわたしにしても、非常に良かった。
 「慰安婦」問題の記録としても重要な証言がたくさんあった。なんとなく、ハルモニがひとりで語る映像を予期していたのだけど、そうではなく、周辺の人々の証言も充実していた。韓国取材もあり、「慰安婦」問題に取り組む研究者や市民運動の人々はこれは是非観た方がいい。
 また、そういう史料的価値を超えて、作品としてもよくできていた。監督とペ・ポンギさんの関わり合いがみどころだが、一定の先入見をもって語りかける監督と、ゆらりゆらりとかわしながら応えるハルモニの会話の間合いは絶品だ。
 
 年を取った女性、それもかなりの貧困層である女性がひとりで生きている空気感。世間から、社会から陽の当たらないところで、病を抱えながら、でもしっかりと生きている瞬間。

 暴力や差別のただなかを生き抜いてきながら、今は静かな沈黙をたたえていた。
 それから約10年後、「慰安婦」問題はどんどん政治化していくが、その直前の、まだ沈黙が支配していた時代。

 沈黙とは死ではないのだと実感させられる映画。是非、観てください。
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by anti-phallus | 2012-01-26 22:18 | シネマレビュー | Comments(0)

さるくびとシネマ第7回

★ずっと観たかった映画が、きっとここにある。

2月3〜6日(金〜月) 京都市東山いきいき市民活動センター
さるくびとシネマBlog内にチラシPDFあります
http://amenic2011.cocolog-nifty.com/blog/files/2.pdf

【四日間の上映作品】
●「姉妹よ、まずかく疑うことを習え」(山上千恵子監督、2011、76分)
 日本で初めて女性で労働省婦人少年局長(片山内閣)になった山川菊栄のたどった戦前戦後。
 映画の冒頭のデモで参加し、発言をしている栗田隆子さん(女性と貧困ネットワーク)のトークあり。

●「妻はフィリピーナ」(寺田靖範監督、1993、100分)

●「セックスと障害とビデオテープ」
(制作・ビヨンドメディアエデュケーション&エンパワード・フェフェス、2007、アメリカ、35分)
 障害を持つシカゴの若い女性たちの当事者団体のメンバーが語るセクシュアリティ。

●「In God’s House 」 (リナ・ホシノ監督。※日本語字幕付きは22分。原語のみ90分。‐‐年)
 アジア系アメリカ人の性的少数者はキリスト教教会や家族からどう扱われたのか。
 堀江有里さんトーク&会場ギャザリングあり。日本語字幕なしの90分は解説を加えて紹介。

●「沖縄のハルモニ~証言・従軍慰安婦」(山谷哲夫監督、1979、)

●「ルッキング・フォー・フミコ」(栗原奈名子監督、1993、57分)

【参加費(鑑賞料)・トークまたは感想交流会込み】
(事前予約)1本1,000円(当日)1,200円
(複数割引)当日・事前予約とも割引あり

お得な事前お申し込み⇒http://cotocoto.jp/event/60338

【トークあり映画】
◆2月4日(土)『ルッキング・フォー・フミコ』/小澤かおるさん「被災地とセクシュアルマイノリティ」
◆2月5日(日)『姉妹よ、まずかく疑うことを習え』/栗田隆子さん「現代の女性労働と山川菊栄」
『妻はフィリピーナ』『沖縄のハルモニ』/菊地夏野さん「フィリピンの移住労働」「日本軍戦時性奴隷」
夜=交流会
◆2月6日(月)『In God's House』『セックスと障害とビデオテープ』/堀江有里さん、菊地夏野さん

【日別】

【3(金) 16:00-21:00】    
18:00-19:00 ⑥ルッキング・フォー・フミコ
19:15-20:35 ①姉妹よまずかく疑うことを習え

【4(土) 10:00-21:00】
10:30-③セックスと障害とビデオテープ
11:30-②妻はフィリピーナ
14:00-⑥ルッキング・フォー・フミコ
16:00-⑤沖縄のハルモニ
★18:00-小澤かおるさんの「被災地とセクシュアルマイノリティ」報告

【5(日) 10:00-17:00】
10:30-①姉妹よ、まずかく疑うことを習え
12:00-トーク+休憩(栗田)
13:00-13:45 ③セックスと障害とビデオテープ
14:00-②妻はフィリピーナ
15:45-トーク+シェア(菊地)
終了後、交流会

【6日(月) 12:00-21:00】
14:00-⑦女と孤児と虎 (500円)
15:30-⑤沖縄のハルモニ 
17:00-トーク(菊地)
18:00-④イン・ゴッズ・ハウス
19:30ートーク+シェア(堀江)
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by anti-phallus | 2012-01-15 21:43 | イベントの案内 | Comments(1)

小人の饗宴

 ヘルツォークの『小人の饗宴』はすごかった。観ているのが苦痛だったはずなのにいつの間にか快感になっている・・・。シュヴァンクマイエルの『アリス』を観たとき以来の衝撃。
 同じく障害者が出てくるという意味で例えば原一男の『さよならCP』と比べて考えれば、ヘルツォークがどれだけぶっ飛んでいるかよく分かる。原はあくまで運動(障害者解放運動)と伴走しようと撮っている。しかしそのなかで被写体がそこからはずれていく瞬間があって、それが魅力にもなっている。『ゆきゆきて神軍』もぶっとんでるけど、あれはあくまでぶっとんだ被写体に監督が振り回されている構図。
 『小人の饗宴』はもう全てがぶっとんでいた。悪罵と暴力と虐待の中で、観客は自分の枠組みが崩れていくのを感じ、理性や正義がいかに薄いものであるか実感させられる。理性や正義が人を解放するのではない。暴力や差別こそが解放なのだと言うように。しかし映画は、暴力や差別によって解放されているはずの人間たちの狂乱を映し続け、解放という言葉のむなしさを照り返すようだ。理性や正義が登場しない狂気の世界では、狂気こそがスタンダードとなる。そして人間たちは狂気に縛られ、運転手のいない車とともに廻り続ける。

 ニュー・ジャーマン・シネマの旗手と称されているが、フランスのヌーヴェルヴァーグより、こっちのほうがすごいんじゃないかと思った。正直、ゴダールは何作観てもわたしにはちっとも面白くなく、近年のものは特に単なる形式美にしか見えない。ルイ・マルやトリュフォーは大好きだけど、ヘルツォークのインパクトはないなあ。
 しかしヘルツォークをやってくれる名古屋シネマテークはほんとうにありがたい。どうかつぶれずに頑張って名古屋の文化ステージを引っ張ってほしい。名駅裏のシルバー・ゴールド劇場の閉館を迎えて、ますますそう思う。
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by anti-phallus | 2012-01-09 20:48 | シネマレビュー | Comments(0)